ザ・まちづくり 3号
過疎地で日々、小中学生と一緒に学んでいて、選挙における子どもの判断能力は問題ないと実感しています。ここ4年、まちづくりや地域の探究、企画をしている限りにおいては、大人たちよりよっぽど具体的なアイデアも出ているのではと思うことも多いです。
学校の教育カリキュラムと連動させ、総合学習で政策理解と分析や模擬選挙を実施していけば、本当の意味での社会学習にもつながる効果が期待できるのではないでしょうか?
親戚地縁、感情的、知名度で決まってしまうことが多い、いまの選挙より、政策議論は盛り上がるはず。なにより現職の議員さんや首長さんにとって、こどもたちにわかりやすく政策を伝える必然がでることは、名前連呼になりがちな選挙の風景が変わるきっかけになるかもしれません。
2013年から認知症患者や障害者にも後見人を立て選挙が認められていることを踏まえると、判断能力を理由に、子どもが選挙できない理屈はたたないともいえます。
ちなみに、都農町の場合、2025年の予測で小中学生の児童数701人に対して、認知症患者数765人です。
東京新聞(2024/05/16)
「ゼロ歳児にも選挙権」吉村洋文・大阪府知事の真の狙いは? 識者は「新たな不平等を生む」と指摘
2024年5月16日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/327333
日本維新の会共同代表の吉村洋文・大阪府知事が、0歳児からの選挙権を、党の公約に盛り込む方針を打ち出した。人口減少が進む中で若い世代に政治的影響力を持たせるのが目的で、成人するまでは親が選挙権を代理行使するという。ただ、子どもが多いほど親の投票数が増え、新たな1票の不平等を招きかねない。専門家からは否定的な声も上がる。(山田祐一郎)
◆維新の公約にする考え 吉村知事「僕は4票の影響力」
「人口構造と投票率等を組み合わせて見たときに、僕らの子どもや孫の世代は圧倒的に政治的に影響力がない。これだけ少子高齢化が進んでいる日本だからこそ、やるべきだと思う」。記者団に対し、吉村氏は13日、「マニフェストに組み込んで、次の総選挙でしっかりと訴えたい」と強調した。同日、交流サイト(SNS)でも自身の考えを発信した。
「0歳児選挙権」について述べる大阪府の吉村洋文知事(日本維新の会公式YouTubeチャンネルより)
「0歳児選挙権」について述べる大阪府の吉村洋文知事(日本維新の会公式YouTubeチャンネルより)
4月25日の知事定例会見でも吉村氏は同様の考えを示していた。市町村の4割超に「消滅可能性」があるとする民間団体の報告に対し「少子化問題を抜本から解決するのであれば、0歳児選挙権だ」と言及。自身に子どもが3人いることを例に挙げて、「僕は4票の影響力がある」と述べた。
子どもに投票権を与えて親が代行するという「ドメイン投票方式」。唐突な提案に思えるが、実はこれまでも、維新が基本政策をまとめた「維新八策」の中で掲げてきた政策という。
◆「若い人の意見を反映することにはならない」
これに対し、一橋大大学院の只野雅人教授(憲法学)は「選挙権は1人1票という形式的な平等が求められ、本人が行使するというのが大原則だ。そこに抵触することは避けられない」と指摘する。
「0歳児に選挙権を」と訴える吉村知事のX(旧ツイッター)投稿
「0歳児に選挙権を」と訴える吉村知事のX(旧ツイッター)投稿
憲法は14条で法の下の平等を定めており、15条で成年による普通選挙を保障し、投票の秘密を侵してはならないとしている。「人口政策として考えているのかもしれないが、子どもがいる人を選挙権という形で優遇することになる」と述べ、新たな不平等を生む危険性があるとする。「親が子の投票を代行すれば、年長者の意見が通る可能性が高く、若い人の意見を反映することにはならない」
海外をみれば、ドメイン投票方式の導入は、ドイツやハンガリーで議論されたが実現しなかった。国立国会図書館が2020年に公表した調査資料によると、選挙権年齢が判明した187カ国・地域のうち、18歳以上は日本を含め9割近い166。最も若い選挙権は16歳以上でオーストリアやブラジル、アルゼンチンなど7カ国だ。
◆「維新の支持層は子育て世代が多い」から?
いま吉村氏が、0歳児選挙権を強調するのはなぜなのか。大阪在住のジャーナリスト吉富有治氏は「総選挙が近いからだ。維新の支持率が下がっており、賛否を含めて注目を集めたいという意図があるのだろう。実際にネットでは話題になっている」とみる。
共同通信の世論調査では昨年10月に13.2%だった維新の政党支持率は今年5月に7.4%まで低下。一方、立憲民主は6.5%から12.7%へと上昇した。
「維新の支持層は子育て世代が多いと言える。これまで維新に1票入れていた人たちが2票、3票入れることになりかねない」と危ぶむ。ドメイン投票方式を否定はしないとしつつ、「時期尚早ではないか。現行制度でも若者向けの政策は実現できる」と話す。
「これまで民主主義の中で1人1票を確立してきた歴史がある。そして投票価値の格差を是正するために何十年も訴訟が続いてきたのに、そもそもの大原則を根底から崩す考え方だ」と東京経済大の加藤一彦教授(憲法学)は批判する。若者にバランスを取ったように見えるが、「選挙至上主義で、数字によって解決しようとしてこのような議論が出てきている。民主主義で選挙は重要だが、選挙以外の多様なルートによって意見をくみ取る仕組みも必要だ」と強調した。